■気分障害

二大精神病に一つである『気分障害』(旧名称「躁うつ病」)。気分がふさいだ状態、すなわち うつ状態を「メランコリー」という。古代ギリシャの医師ヒポクラテスは、精神の病を「メランコリア」と「マニア」に区別
した。
マニアとは気分が高揚した状態、躁状態をさしたが、これは現代とは異なる概念である。18世紀、フランスのエスキロール は、マニアを広い意味での狂気とし、メランコリーをモノマニー(高揚した気分)とリペマニー(苦痛の気分)に分類した。
躁状態の後に、うつ状態になることを観察していたのでモノマニーとリペニーをメランコリーに含めたのである。 19世紀半ば、J・P・ファレル(仏)が「循環精神病」、J・バイヤルジュが「重複型精神病」という名称、概念をとなえ、
一つの病気の別の状態が「躁」と「うつ」だと考えられるようになった。
一方、ドイツでは同じ頃、L・マイヤーが「周期性精神病」と名づけた。さらにクレペリンが「躁」と「うつ」のいずれか 一方の状態が現れるもの(周期性精神病)と両方が周期的に交互に現れるもの(循環精神病)とに分類した。
この考え方が現在の「うつ病(単極性障害)」と「躁うつ病(双極性障害)」の分類につながることになった。 現在では正式には「うつ病」や「躁うつ病」と呼ばず、『気分障害』や『感情障害』と呼ばれる。
一定の期間を過ぎれば通常の精神状態に戻り、人格荒廃にいたることはないのが、気分障害の特徴である。
■うつ病(単極性障害)
うつ病の症状
気分の落ち込み、いわゆる「うつ状態(抑うつ状態とも)」が深刻になり、激しい悲哀感、虚無感が続き 物事をすべて悲観的にとらえる。絶望感、罪悪感にさいなまれ、自殺を切望するほどではないが、死にたくなるような
気持ちをもつことも多い。
気分障害の8割がうつ病であり、中高年層の発病が多い。 うつ病の患者は顔に生気がなく、意欲が低下し、動作が緩慢になるので体の病気にかかっているようにも思える。また、 夜遅く、ベッドに入っても早朝から目覚めてしまう「早朝覚醒」うつ病の典型的症状である。
多くの場合、朝方にうつの状態がひどく、夕方には落ち着くと言われている。重症になると妄想や錯乱といった症状が 発生する。 うつ病はそれを引き起こした状況によっても分類される。
1.引越しによる慣れ親しんできたものとの別れが契機になる「引越しうつ病」 2.戦争捕虜が帰還して解放され、緊張のバランスが一時的に失われて起こる「荷下ろしうつ病」
3.大震災や民族迫害などによって生活の基盤がなくなったことにより起こる「根こぎうつ病」 4.打ち込んできた仕事などが不成功に終わるなどして落胆し自己嫌悪になることから生じる「燃え尽きうつ病」もある。
うつ病は人口の1割以上が生涯のうちにかかるとも言われ、「心の風邪」とも呼ばれる頻度の高い病気である。
■双極性障害(躁うつ病)
躁状態とは

気分が高揚した躁状態だけが続く場合を「躁病」というが、これは非常に少ないとされている。多くの場合躁と うつが交互に現れ、一般に躁状態より、うつ状態の期間が長い。
躁とうつという両極にわたるため「双極性障害(旧名称、躁うつ病)」 と呼ばれ20歳前後の発病が最も多い。躁状態の患者には奇妙な爽快感があり、精神活動が非常に活発になり、抑制がきかなくなる。
睡眠時間も減っていくが、本人は疲労感はまったくない。自分が完全無欠に思え、自信にみちて何にでもチャレンジしようとする。 万能感もあるために将来の悩みなどもなくなり、誇大妄想に発展することもある。
また何かを考えようとすると別の違った考えが脈絡 なくどんどん湧いてきて、自分でも止めることができず、最初に考えようとした何かに決して到達できなくなる(観念奔逸)。したがって 周囲からみると支離滅裂になったように見える。
また、多動で落ち着きがなく、思いついたことをすぐに行動に移す(行為心拍)。そして 浪費や過剰飲酒、性的逸脱などの過剰な行動をとり、周囲がそれを止めようとすると、怒りを爆発させる。
また集中力に欠けるため、 こうした情動は長続きせずにすぐ変わる。 双極性障害ではこうした躁状態とうつ状態が交互に繰り返される。
家系調査、双生児研究から、双極性障害には遺伝的要因がある ことが推測されている。これに環境要因が重なって発病するものと考えられる。